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ウイスキーの製造工程についての説明です。もちろんウイスキーも蒸留所によって様々な個性があるのでここでの説明は「一例」として紹介いたします。
まずはウイスキーの原料となる二条大麦のモルティング(製麦)です。 大麦を浸漬して発芽させ、その後発芽させたものを乾燥させる工程です。およそ1週間〜10日程の工程です。このように発芽させて「麦芽」を造るのは発芽させることによって酵素を活性化させて後の糖化を行わせるために必要な工程なのです。ビールも同様ですね。
続いて麦芽を粉砕(挽く)する工程です。 ミル(粉砕機)によって粉砕された麦芽は荒いものから細かいものを順にハスク、グリッツ、フラワーと言い、粉砕比率はハスク:グリッツ:フラワー=2:7:1となるように粉砕していきます。ハスクの部分が沈殿して自然の濾過層を形成するのですがハスクが多すぎると液体が通り抜けすぎて濾過にならず、フラワーが多いと目詰まりを起こしてしまいます。
麦芽が挽き分けられたら続いて糖化の工程です。 マッシュタン(糖化槽)へお湯と共に投入されると30分程でハスクが沈殿し濾過層を形成しつつでんぷんが糖化し甘〜い麦ジュースが出来上がります。続いて2回目も同様に1回目よりも熱いお湯を投入します。3回目のお湯の投入で残糖分を回収し次の1回目の投入に回します。この後の発酵に使用されるのは1回目と2回目の麦汁です。
続いて発酵〜蒸溜です。 ウイスキーは基本2回蒸溜ですね。ウォッシュバック(発酵槽)へ麦汁と酵母が加えられアルコール発酵をさせます。 発酵は4日程で度数は約8%になります。1回目の蒸溜をするウォッシュスチル(初溜釜)ではおよそ20%の度数のローワインが出来上がります。 そして出来上がったローワインを2回目のスピリッツスチル(再溜釜)で蒸溜すると約70%のニューポットが出来上がります。また、2回目の蒸溜の際にはミドルカットがされます。蒸溜で最初に出てくる液体(ヘッド)は度数が高すぎ刺激臭が強いため熟成には不向きです。後半の蒸溜液(テール)は度数が低く原料からくる強い香りがありこれもまた熟成には不向き。熟成に使われるのは中心部分(ハート)の中取り部分だけで残りのヘッドとテールは次のローワインと一緒に再溜に回されます。またこのミドルカットのタイミングは時間で区切るやり方と感性(味覚や香り)に頼る方法があります。ベンチャーウイスキーは後者ですね。また、蒸溜で使用されるポットスチルは蒸溜の際、銅イオンを放出させウイスキーにとって不要な成分を取り除く効果があります。銅イオンを放出しているわけですからポットスチルはだんだん薄くなり20〜30年も使うと指で穴が開く程になります。定期的な修理や交換が必要なんですね。
最後は熟成です。 蒸溜したてのニューポットは無色透明の液体です。これを樽に詰め熟成を経てウイスキーとなり市場へ出されます。熟成に使われる樽はバーボンの熟成で使用された樽やホワイトオーク樽が主に用いられます。サイズで名称も変わり、一般的なのはホグスヘッド(約230リットル)、バレル(約180リットル)、パンチョン(約480リットル)があります。バーボンで使われた樽はバレル(バーボンバレル)なのでこれをホグスヘッドに組み直したりしています。バレルは液体と接触する面積の割合が大きいので長期熟成には向きません。パンチョンは逆のことから長期熟成に良く使用されています。ウイスキーが熟成される樽は他にも様々な酒の貯蔵で使われたものを使用することがあり、最もメジャーなものはシェリー樽。他にもワイン樽、コニャック樽等があります。また、熟成されている間には少しずつ中身が蒸発してしまうんですね、およそ年に2、3%。天使の分け前と言われるものです。そのような熟成でスコッチウイスキーでは3年以上を経たものだけしか市場に出すことができませんが日本ではそのような定義はありません。なので数ヶ月の熟成のものもあります。
以上、簡単ですが製麦〜製品までの過程でした。ウイスキーの一番の魅力は言うまでも無く熟成でしょうがニューポットができるまでの工程によってもかなりの違いが生まれてきます。個人的には日本酒の熟成酒も好きなのでウイスキーが好きになったといったところがあります。日本酒とウイスキーの熟成はぱっと見何も関連ない感じですが飲み手にとっては共通するもの、繋がってくるものを感じます。ウイスキーを飲まれている方は日本酒を、日本酒を飲まれている方はウイスキーをいかがなものでしょうか? 新しい発見があるかもしれませんよ。
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